日本のすがた・かたち

2017年7月10日
みがき隊 出動

先日、国の登録有形文化財である熱海「東山荘」を皆でみがいてきました。

私は講師で参加し、前半は座学で東山荘とはどのような建造物なのか、なぜ文化財に登録されたのか、またこの名蹟を次代にどのようにして伝えて行けば良いのか、などを話ました。

私の願いは、先人が遺した優れた文化財には、ずっと昔から続く人間の叡智が詰まっているので、それを保存し活用し、子や孫の代にバトンタッチして行ければ、というものです。

東山荘はMOA美術館の創立者である岡田茂吉翁が、昭和19年10月5日、熱海に移られた最初の住居です。

私は先年翁が設計された熱海「水晶殿」の改修設計の任に就き、その折に水晶殿の建つ地を選ばれた場所が、熱海駅に近いこの東山荘であることを知りました。

翁は東山荘の二階の窓から見える北西の地を指さし、「あそこが良い」といわれたといいます。
あそことは現在「水晶殿」や美術館の建つ場所「瑞雲郷」でした。

今回みがいた場所は一階玄関の内外、待合、それに玄関外から離れ(応接室)への渡り廊下でした。
若い皆さんは、初めは戸惑い気味でしたが、少し慣れてくるとフットワークも良くなり、終わりの頃は気持ちよさそうでした。

私は、名建築の保存活用は愛情をこめた手入れから始めることを勧めています。みがくことはその考えに応えてくれます。
終わってから皆で背骨を伸ばし、暫し天井を眺めました。

創建は昭和8年。84年の風雪に耐えた木造の別荘建築は私たちみがき隊を待ってくれていたようでした。

 

「またみがきましょう!」。
隊長の及川博文さんはじめ、皆さんの声でした。

 

 

 

この夏はみがき参りて楽しけり古人を偲ぶ汗も清しく

 

 

 

 


2017年7月10日