太田新之介作品集
2012年10月30日
作品-4 書画
短冊 和歌
「也万東奈留那古美乃以呂遠都多江加之
須久幾於母伊屋波難越堂与利仁」
大和なる和みの色を伝えかし直ぐき思いや花をたよりに
造作余話
書画は人生の友のように若いころから書いている。
筆で巻紙に手紙を書いた最初は中学生の頃だ。ラブレターの類だった。
筆で書などを書くことになったのは母の影響で、母は漁師の女房でありながら、和歌を詠み手紙を筆で書いていた。
建築家を志して30数年になるが、書は道連れのように私の建築的思考に寄り添ってきた。
現在でも折にふれ書いている。
この和歌は「日本なるものは何か」という、自己への問に答え詠んだ一首だ。
先人が伝えてきた大和心(和みの色)を次の世代に伝えていこう
正直な心根(精神性)や芸術性(花)をたよりにして
この和歌には曲がつけられた。作曲は山田流筝曲の草間路代さんである。
草間さんが能舞台で歌った美しい旋律が今でも耳に残る。第2回「和の心にて候」の舞台だった。
次年、風間哉子さんが舞とともにこの和歌を歌った。清冽な趣があった。
「やまとなる・・・」は、自作歌中、最も好きなもののひとつだ。
この短冊は叔母と共著で出版した、句歌集「於八於五(おばおい)」の裏表紙をかざった。
短冊は明治期に作られたという華麗なもので、日本の美しさがこの料紙にも漂っていた。
この歌を口ずさむと、日本の色を感じる。
次世代に残せるものは何か。
自問の歌といってよい。
2012年10月30日