太田新之介作品集
2012年9月14日
作品-2 茶道具
染付散華文花入 002
径 9.2 高 20.2 1984・5月作
焼成 静岡県韮山 毘沙門窯
造作余話
この花入ができた28年前の10月、亡き母のために「追善供養の茶事」なるものを催した。
もちろん初めて亭主をした茶事だった。
床掛物の表具の裂地を選び、花入、茶碗、茶杓、香合、を作り一会臨んだ。客は禅僧を上客として、染色家、陶芸家、表具師、友人の6人で、忘れられない茶事となった。
この時の感想メモが残っている。
「… 一座建立(いちざこんりゅう)といわれ数人で行う茶事は、現代の満艦飾のごとく賑わう大寄せの茶会とは、その趣と志を異にする。 客と亭主が交会することで作り出す緊張関係、清談を通し識る美jのことわり、季節の刻々の移ろいを己にきざんでゆく所作、そして揺れ動く心に今という時を切り取らせ自己の存在と位置を確認させてゆく・・・」
こんな風に感じていた。そして、
「茶事は寄り合いの座の裡(うち)に在って、夥しい日常性を越え、人間が本来もつ孤独の魂をかいまみる所業だと思う。そして各々が一連の行為を通じ、至らぬ己を発見し内省していくことだと思っている」
と、記している。
今ではこんなに身構えることはないが、茶事の面白さと深遠さを発見した一会だったのである。
有田で修業した陶芸家が器体を作り、そこに呉須で絵を描いた。散華図の迦陵頻伽(かりょうびんが)や飛天は、亡母への供養の一念から選んだ。
この花入には、数珠玉やミゾソバ、吾亦紅などの秋の花を入れた。
朝に初時雨は上がり、後座の空は高く澄み渡っていた。
” 飛天女は誰に似るやら恋時雨 ”
2012年9月14日